2020年にプロジェクトマネージャ試験に合格した筆者が、全2回で勉強法を紹介する合格体験記。前回の午前編に続き、今回は午後I・午後IIの対策について書いていきます。
午後Ⅰ・Ⅱの特徴
プロジェクトマネージャ試験の午後は記述試験です。午後Ⅰは長文読解と短答記述、午後Ⅱは論文形式の設問に答える構成です。
午後Ⅰは、プロジェクトに関する事例文を読み、その内容に基づいて短く記述する問題が出題されます。
午後Ⅱは、実務経験をもとに論文を書き上げる形式となります。
どちらも午前の選択式試験とは異なり、知識だけでは太刀打ちできません。限られた時間の中で文章を正確に読み取り、自分の言葉で簡潔かつ論理的に答えるアウトプット力が求められます。
午後Ⅰ対策:読解と記述のコツ
午後試験の対策には、翔泳社の『情報処理教科書 プロジェクトマネージャ』を使用しました。午後Ⅰ・Ⅱの両方をカバーしており、過去問の傾向分析や模範解答が掲載されている定番の一冊です。
午後Ⅰでは、事例文と設問を読み、プロジェクトマネージャとしての判断や知識をもとに解答を作成します。プロジェクトマネジメントの基本的な知識(PMBOKの概要レベル)と2〜3年程度の実務経験があれば、解答するのは難しくないレベルの設問だと思います。
ただし、午後Ⅰの難しさは「知識があるからといって得点できるとは限らない」点にあります。
なぜなら、多くの設問は「○○文字以内で答えよ」といった指定のある記述式。問われていることは理解していても、指定字数で端的にまとめるのは意外と難しかったりします。
よって、得点するためには、知識だけでなく指定文字数で解答を作るコツが必要になります。そのコツをつかむために、『情報処理教科書 プロジェクトマネージャ』は有効でした。解答の表現方法で字数を調整するなど、実践的なテクニックが紹介されていて参考になりました。
解答を作るコツがわかってきたら、過去問を使って実際に解答を作る練習が必要です。私自身、過去問を繰り返し解くことで、指定文字数で解答を作るのがうまくなっていった感覚がありました。
まとめになりますが、午後Ⅰで問われるプロジェクトマネージャとしての知識は基本的なものが多いです。私の場合は、プロマネの知識を増やすよりも、過去問で「決められた文字数で解答を作る力」を鍛えたことが得点UPに繋がりました。
午後Ⅱ対策:論文を書き切る力
合格の鍵は「書き切る力」
午後Ⅱはプロジェクトマネージャ試験の最大の山場です。
そして、この試験のポイントをはじめに申し上げると「書き切ること」です。
それができれば、合格の可能性は非常に高くなると思っています。
逆に、どれだけ内容が優れていても、規定の字数に達していなければ合格する可能性はゼロです。
午後Ⅱ試験では、「プロジェクトマネージャとしての判断の優劣」が評価されている訳ではありません。
たとえ、プロジェクトマネージャーとしての判断や対応が凡庸だったとしても、プロジェクトマネジメントの原則に則った判断・対応ができていて、それを論理的に説明できていれば合格ラインに達するはずです。
だからこそ、内容の良し悪しにこだわりすぎず、「書き切る」ことを最優先にすべきだと思います。
繰り返しになりますが、書き切ることができなければノーチャンスです。
書き切るための「型」
論文を書き切るために私が重視したのは「型を持つこと」でした。
型とは、どんな設問にも対応可能な“論文ネタ”のことです。
私は、これまでに経験したプロジェクトのうち、2つのプロジェクトをネタとすることに決めて、どんな出題でも2つのネタのいずれかで論文を書くことにしました。
午後Ⅱは2時間で3,000字近い論文を書く試験です。問いを見てから「どのプロジェクトで書こうかな。」を考えている時間的な余裕はありません。「この問いにはどちらのネタが使えそうか」と考える方がスピーディーに判断できます。
また、ネタとするプロジェクトがあらかじめ決まっていれば、設問アの「プロジェクト概要」の部分は定型文として事前に準備することができます。
事前に設問アだけ作っておくことができるので、冒頭から筆が止まることなく、スムーズに書き始めることができます。(設問アで筆が止まると精神的に焦るので、設問アからスムーズに描き始めることができるメリットは結構大きいです。)
設問イ・ウは問われているテーマによって記載内容を調整する必要がありますが、そこは練習あるのみ。過去問を使って練習を重ねておけば、対応力は自然と身につきます。
練習は必ず手書き
2時間で3,000文字を手書きするのは、体力(握力)の観点でもかなり過酷です。
最初のうちは、論文の終盤(設問ウあたり)になると手が疲れて力が入らなくなり、文字を書きたいのに書けない、といったことを経験しました。
普段の生活で手書きをする機会は少ないので、体力(握力)的に3,000文字を書き切れない、と苦労する人は結構多いのではないかと想像します。
ですので、論文の練習にはパソコンを使うのではなく、手書きを徹底することをおすすめします。
私も手書きの練習を重ねることで徐々に手が慣れていって、時間内に3,000文字を書き切ることが可能になりました。
また、見落としがちですが「ペン選び」も大事です。
私は「手の負担を少しでも減らしたい」と思い、クルトガというシャーペンを使っていました。
クルトガは、書く度に芯が回転してトガり続けるように設計されたシャーペンです。
このシャーペンは、持ち変える回数を減らすことができて、手の負担が少し軽くなりました。
自分にとって書きやすい道具を選ぶのも、書き切る力を高めるための一手だと思います。
まとめ
以上、2回に分けてプロジェクトマネージャ試験の合格体験記を紹介しました。
私は午前対策に1か月、午後対策に2か月、合計3か月の試験勉強で合格することができました。プロジェクトマネジメントの基礎知識と一定の実務経験がある方であれば、決して無理のあるスケジュールではないと思います。
最大の壁は午後Ⅱの論文でした。最初はまったく書けず、何度も心が折れそうになりました。でも、論文の完成度を求めるのではなく、とにかく「それっぽい論文を書き切ること」を重視する姿勢に切り替えてから、筆が進むようになった感覚があります。
試験本番の論文も「なんとか形になったかな…」という程度の手応えで、自信満々だったわけではありません。それでも合格できましたので、必要なのは論文の完成度ではなく、合格ラインに届く論文を書き切れるかどうか、が重要なのだと思います。
なお、この資格を取得したからといって、プロマネとしての実力が向上するわけではありません。あくまで、自分の知識と経験をアウトプットして、それを評価してもらう場だと思います。
ただ、試験対策を通じて、自分の経験を言語化し、論理的に伝える力が鍛えられたという意味では、大きな学びがありました。
プロジェクトマネージャ試験は、情報処理技術者試験の中でも難易度が高く、年1回しか受験機会がないので、合格するのが難しい試験です。ですが、合格すれば更新不要の一生モノの資格になります。プロジェクトマネージャの市場ニーズは高まっていますし、挑戦する価値は十分ある試験だと思います。
これから受験される方にとって、本記事が少しでも参考になれば嬉しく思います。私自身も、受験前には多くの合格体験記に助けられました。この体験記が、かつての私と同じように、どなたかの試験対策に役立ててもらえたら幸いです。